同じよみで異なる語

 日本語の音の最小たん位は，母音と子音を合わせても二十數種類しかない．

母音たん獨，あるいは母音と子音でできている音節の種類も，せい音，濁音，

半濁音，促音，撥音，拗音を合わせても百ほどにすぎない．

 このため，ひらがなで書く場合やはつ音する場合には同じでも，意味が違い，

漢字で書くと違う書き表し方をする言葉がたくさんある．

 はつ音が同じで，漢字で書くと文字が違う音よみの語を同音異義語という．

例えば，「コウショウ」とはつ音する同音異義語には，次のような語がある．

口承 公傷 公稱 行賞 工匠 高唱 校章 厚相

また，はつ音が同じで，漢字をあてると文字が異なる訓よみの語を同訓異字の語

という．例えば「すむ」とはつ音する同訓異字の語には，次のような語がある．

 濟む 澄む 住む
 
 

わたしたちは，同音異義語や同訓異字の語を耳で聞いたとき，前後の語の

在り方から，それがどんな意味の語であるかを判斷していることが多い．例えば，

(1)制服につけていたコウショウがなくなった．

(2)どんな服裝をしていたかは，時代コウショウによってわかった．

(3)和平コウショウが決裂する．

では，「制服」「なくなった」から「校章」を，「時代」から「考證」を，

「和平」「決裂」から「交涉」を判斷している．

 また，

(4)支はらいがすむ．

(5)池の水がすむ．

(6)校外にすむ．

では，「支はらい」から「濟む」を，「水」から「澄む」を，「校外」から

「住む」を判斷することができる．
 
 

 現在のわたしたちの生活の中では，ワ-プロ(ワ-ドプロセッサ)を使う機會が多く

なった．ワ-プロでは，一つ一つの言葉のよみ方をかな，あるいはロ-マ字で

入力し，それを漢字にヘン換しながら文章を作っていく．しかしワ-プロは，

必ずしも，前後の語からふさわしい漢字を自動的に選んでくれるわけではない．

ワ-プロでヘン換するとき，次の語が出てきた．それぞれの文ではどれを選べば

よいだろうか，考えてみよう．

「タイショウ」-「對象 ·對照·對稱」

(7)左右がタイショウのず形．(對稱)

(8)中學生がタイショウの課題作文．(對象)

(9)タイショウ的な性格の兄弟．(對照)

「キュウ」-「氣候·寄稿·寄港」

(10)溫暖なキコウの地域．(氣候)

(11)俳句をざっ誌にキコウする．(寄稿)

(12)大きな客船がキコウする．(寄港)

「はかる」-「圖る·計る·測る」

(13)長身をはかる．(測る)

(14)便宜をはかる．(圖る)

(15)時間をはかる．(計る)

「とる」-「取る·採る·捕る」

(16)きょ手で決をとる．(採る)

(17)猫がねずみをとる．(捕る)

(18)たなから洗ざいをとる．(取る)

「あげる」-「上げる·擧げる·揚げる」

(19)例をあげる．(擧げる)

(20)たこをあげる．(揚げる)

(21)値段をあげる．(上げる)